<Love romance>

















忍足侑士君…。
あたしと同じ氷帝学園に通っていて、男子テニス部の正レギュラー。
氷帝の男子テニス部は200人を超える程の部員がいる。
その中のほんの一握りの人間しかなれないレギュラーになった凄い人。















…そして、あたしの好きな人なのです。
















あたしと忍足君の繋がりなんて何にもない。
クラスだって一度も同じになった事がない。
唯、廊下で擦れ違ったり部活中の忍足君を見てるだけ。
跡部君や忍足君のファンの子みたいに騒いだりもしない。
性格上苦手なんだ…積極的な人には憧れるけど。
だから親友のとあたしだけの秘密。

「あ!、いるよ」

「何処?」

彼処…と指差す先は決まって忍足君の姿。
体育の授業で外に出て行った忍足君をが見つけた。
2階の窓から見ると忍足君がいた。
学校用のジャージ姿をみるのは好きになってから初の事だった。

「ジャージだぁ…」

は可愛いなー」

忍足君を眼で追い掛け、ギリギリ迄見つめているとが言った。

「は?何??」

顔は…まあ見れる位の顔だけど、美人じゃないし…凡人だと思う。

「恋してて可愛い」

茶化す様に笑うに何て言えば良いのか解らない。

「あ、予鈴だ」

行こうと促すあたしには未だ笑っていた。

が羨ましい」

の彼氏はサッカー部の人。
テニス部には負けるけどやっぱり格好良い人が多い。
は去年自分から告白してOKを貰ったけど…今はあんまり上手く行ってないみたい。

…」

「ま、別れる時は仕方ないからね」

笑ってるつもりみたいだけど、は泣きそうな顔をしてた。
そんなに何て声を掛ければ、言葉を言えば良いか解らなかった。


















「忍足君ってうぐいす色が好きなんだって」

「う、うぐいす色…?」

放課後はが彼氏を待つのにあたしも付き合う。
それがあたしととの約束でもあって日課でもある。
が付き合う前から…片思いの時からの。
最近は殆ど忍足君の話しばっかりしてる。
前はと彼氏で行った映画の話しとか、プリクラとか貰ってたんだけど。
は徐々に彼氏の話しはしなくなった。

「うぐいすってどんな色してたっけ?」

それでも放課後待って一緒に帰る事だけは欠かさない。
を強いと決め込んでたからかもしれない。
放課後の会話は弾む。
クラスメートのいなくなった教室に2人だけでずっと話してるから。
2人でファッション雑誌を読んで服を買ったり、映画に行ったり。
そんな計画が必ず生まれるから。

、もう帰って良いよ」

遅くなっちゃうからとは陽が沈み掛けて来た頃に言った。

「ん…でも未だ付き合うよ」

何時もはもう少しだけ一緒にいる。
だから今日もそのつもりで答えた。

「良いから、帰って!」

少し強い口調でがあたしに言った後、驚いた顔をした。

「何時も付き合わせてるから」

そう付け加えたけど明らかに可笑しい。

「…解った、じゃ明日ね」

「バイバイ」

何時もと違い苛立つを不審に思ったけどきっと彼氏と話したい事を考えてるのだと、的外れな事を思ってしまった。






















「おはよ」

朝、あたしよりも早く来る筈のがいなかった。
珍しくゆっくり出たのかと思い机に着いて待っていたが、が来る事はなかった。
休み時間に携帯にメールをしても返事はない。
電話しても留守電になるだけ。
と連絡が付かない。

「どうしたんだろ」

気になったから、昼休みにの彼氏の所に行った。
其処は、忍足君のクラスでもあって緊張した。

「あの…」

近くにいた人に頼んでの彼氏を呼んで貰った。

が来てないんだけど」

の彼氏と話すのは初めてではない。

「…アイツ、休んだのかよ」

舌打ちしている彼氏の行動が掴めなくて問いただした。

「フったんだよ、昨日」

「…は?」

をフったと言った。
は別れるかもしれないとあたしに言ってた。
昨日苛立っててあたしを先に帰したのは覚悟する時間が欲しかったって事?

「何で?!」

「別に好きじゃなかったから」

その言葉にキレてあたしは思わず目の前にいるコイツの頬を叩いた。
響き渡る音に吃驚してクラス中の人の注目を集めた。
頬を叩いた手が徐々に熱く熱を持って、痛みを伴った。
叩たかれた本人は吃驚してあたしを唯見てるだけだった。
こんな奴にはフられた…。
そう思うと勝手に手が動いた。

は、あんたに勿体無い」

そう言って携帯を握り締めてクラスから出て行った。
























それから、の家迄走った。
鞄は教室。
財布も全て置いて来た。
持ち物は携帯だけ。
学校の近くにあるの家の呼び鈴を鳴らした。
のお母さんと軽く話しての部屋に入った。



…」

眼を赤く腫らしていた。

「ごめんね」

謝るとあたしはに抱き付いた。

「聞いた?」

そう言っては泣いた。
あたしにも涙が流れた。

「あたし、叩いちゃった…あの人」

2人して落ち着いて来た頃になってあたしが口を開くとは眼を丸くしてあたしを見た。

が?」

聞き返されて頷くとは笑った。

「ありがと、スッキリした」

やっと、は笑ってくれた。
それを見てあたしも笑った。

「気付かなくてごめんね」

「叩いてくれたから許す」

そして2人してまた一緒に笑った。

、鞄は?」

「学校…取りに行かなきゃ」





















、お客様よ」

幾ら今笑っているとは言え、どれくらい泣いかも解らない。
気付いた時にはもう既に夕日が眩しい位街を赤く染め始めていた。
そんな顔で出るのには気が引けた。

「誰だろ」

そう言うとの部屋が開いた。

「「え?!」」

そこには2人いて1人はあたしが昼間叩いた人で、もう1人は…。

「忍足…君」

「家知らんし鞄届けられんやろ?」

案内人にの元彼を使ったって平然と言いのけた…。
ほっといてもクラスメートが届けるか、明日迄放置でも全然平気なのに…。

「ありがとう……ございます」

手渡された鞄を受け取って御礼を言うと忍足君は笑顔を見せてくれた。

、話しはないからコイツに帰って貰って」

勿論コイツと言うのはの元彼。

「良いの?」

恐る恐るに尋ねるとは笑った。

「あたしをフった奴に用はないわ」

あたしが思うより大分吹っ切れてたみたい。

「せやな、もう帰れや自分」

連れて来させた忍足君に迄言われ、の元彼は1人で帰って行った。

「本当スッキリした〜」

帰って行った事を確認するとは大声で笑った。
もうその顔は泣きそうな顔等していない。
























「明日、学校でね」
はあたしにそう言って家に入っていった。
























「道こっちでええの?」

「は、はい」

泣きそう。
今のあたしの方が泣きそう。

「車危ないで」

勢い良く走り去る車に気付かないでいた。
危うい所で忍足君が腕を引いてくれた。
不意打ちで軽く引っ張られただけでもよろけてしまった。

「大丈夫か?」

「す、すみません!」

よろけてぶつかったのは忍足君の胸。
忍足君の付けてる香水と汗の匂いがした。
すぐに離れようとしたらまた腕を引かれ舞い戻ってしまう。
『忍足君、悪いけど送ってあげて』があんな事言うから…。

「あれ?侑士じゃん」

「部活サボった後のこのこ現れやがって」

ってレギュラーの跡部君に向日君に宍戸君?!
嘘…。

「そいつ、昼間の」

宍戸君があたしに気付いた。
その時急いで忍足君から離れた。
顔めちやくちゃ赤いかも…。

「あぁ昼間の」

何時の間にか囲う様に周りを塞がれた。

「凄かったぜ、お前のビンタ」

向日君が頬を指差して笑った。
…と言う事は。

「もしかして…、見て…ました?」

「「「勿論」」」

3人に即答されて恥ずかしさが増した。
明日も学校なのに恥ずかしい。
今更になって大勢のギャラリーがいた事を思い出して恥ずかしくなった。
しかもテニス部のレギュラーの人達も見てた訳だし…。

「侑士ってばさ〜」

「岳人!」

向日君が何かを言おうとするのを忍足君が慌てて止めた。
凄く慌ててて何時もクールな忍足君とは思えなかった。

「未だ言ってねぇのか?激ダサだな」

「トロい奴だな」

何の話しか解らないし、いて良いのかも解らない。
何となく居づらいし、1人でも帰れるから1人で帰ろうかなぁ。

「あの、あたし1人で帰ります」

鞄も持ってるから何時もと同じ訳だし。
途中迄送ってくれた御礼を言って帰った方が邪魔にならないし。

「ちょお待ち」

また腕を引かれてよろける。
今度ぶつかったのは跡部君…怒ってるかも。

「ご、ご、ご、ごめんなさい!」

「いや、大丈夫か?」

気高い跡部君だからあたしなんかがぶつかったら怒るかと思ってたけど、意外に優しくて安心した。
あたしの事を支えてくれたし…。
此を、此の状態をレギュラーファンに見られたら、あたしってヤバいんじゃ…?
今更不安になった。

「本当に大丈夫ですから」

忍足君はもうあたしの腕を掴んでないから、その場を逃げる様に走り去ってしまった。

























「おはよー」

おは〜」

次の日に学校に行けばがいた。
昨日の事は色々悪かったけどが来てくれて良かった。

「昨日どうだった?」

が嬉しそうに聞いて来る。
まあ仕掛けたのはだし…当たり前だけど。

「…途中で帰って来ちゃった」

自分の机に突っ伏して自己嫌悪に陥る。

「バカだぁ」

呆れた声を出すの気持ちは良く解ります。
あたしも自分に呆れてるの。

「もう…せっかくのチャンスだったのに」

あたしの机の前に立ち、腰に手を当ててるを見上げると視界の端に忍足君がいた。

「おはようさん」

ニッコリ笑う忍足君に驚いてるとは昨日の御礼を言った。

「じゃあたしは外にいるわ」

は気を使ってあたして忍足君を2人だけにしてくれた。
他に生徒は来てなかったから…。

「昨日は、ごめんなさい…急に帰ったりして」

「ほんまやよ、驚いたで」

あたしを見る忍足君は苦笑いしてるのに何処か穏やかな顔をしていた。

「あんな、俺昨日があいつの為に怒ったやろ?あれに惚れたんよ」

普通に言って来る忍足君に唖然とした。

はどうなん?」

顔を覗き込む真剣な忍足君と思いっきり眼を反らした。

「顔、赤いで」

今度は嬉しそうに笑ってるのが見えた。

「期待してええの?」

また真剣な顔してあたしを見た。
口元を手で覆って、赤い顔してるのも自分で解る位緊張して…心臓がドキドキ言ってた。
やっとの思いで口を開いて忍足君に言えた。

「あ…たし…、忍足君が………好、き…です」

恐る恐る忍足君の顔を覗くとあたしが忍足君を好きになった時と同じ顔をしてた。

「ありがとさん」

そう言って忍足君は笑った。



























「やっと言ったな」

「本当にトロいな」

「激ダサだな」

「良かったね〜

























『あんたに勿体無い』

そう言って眼の前の自分よりも20センチは高い人間を叩いた。

『今の誰や』

叩かれた人間に問い掛けると隣のクラスの奴だと言った。

って奴の家教え』

鞄も何も持ってない筈だ。
教室とは別方向に走っていったのだから。

『どうしたんだよ、侑士』

『今の子、めっちゃ気に入ったで』

『あーゆーのが好みなのか?』

『あの子見た事あんねん、良く見てる』

『お前のファンか?』

『知らんけど、手出したらあかんで』

『バカが…出すかよ』



























あん時からずっと気になってたんよ。
絶対俺のもんやて。
友達の為に頬叩くなんて感動やん。
その後友達ん所に向かうとかな。
何かラブロマ映画にありそうな展開やった気がするわ。
せやけど此から先は映画ややらんし、俺等映画の作り物とちゃうから。

「ちゃんと台本のない恋して行こな?」

「…プッ…あはは、忍足君がラブロマ映画好きなのは知ってたけど、此処迄とは」

ギュッと俺の腕の中に閉じ込めた。
あの映画でヒーローがヒロイン抱き締めるんわ、こんな感じやったんかなぁ。
せやったら解る気するわ…。



























こんなにもが愛おしい…って所やろか?


























ふいぃ忍足ハズイ〜///
auの携帯で打てる限りの文字数です、此処は抜かして。
10000だから…本文で5000文字位でしょうか?
3日も掛けてしまいましたよ。
その割には全然良くないです…。
前半忍足出て来てないし(汗

改行しまくるweb作家は下手糞らしいです。
すみません…改行しまくってます(汗
すっごい今更だし、特に関係はないけどS3勝利記念って事で(笑

2005/9/3